サッカー

『戦術的ピリオダイゼーション再考』は何を教えてくれるのか

──「戦ピリ」を“理解したつもり”で終わらせないための一冊

「戦術的ピリオダイゼーション」という言葉は、日本の指導現場でもかなり浸透してきました。
一方で、

  • 結局、何が他のトレーニング理論と違うのか
  • なぜ“戦術がすべての中心”と言われるのか
  • 「モルフォシクロ」って結局なにを指しているのか

こうした疑問に理論的に答えられる人は少ないのが現状ではないでしょうか。

本書『戦術的ピリオダイゼーション再考』は、その“わかったつもり”になりやすい戦術的ピリオダイゼーションを、根本から再整理し直すための一冊です。

「戦術的ピリオダイゼーションとは何か?」をモルフォシクロから捉え直す

本書の最大の特徴は、「戦術的ピリオダイゼーションとは何か?」という問いを、モルフォシクロという概念を軸に徹底的に掘り下げている点にあります。

◆ モルフォシクロとは?

モルフォシクロとは、

「ゲーム(試合)とゲームの間に存在するトレーニングサイクル」
のことを指します。

ただの「1週間の練習計画」ではありません。

  • 試合で何が起きたのか
  • それはチームの戦術的意図とどう結びついていたのか
  • 次の試合で“どんな状態”でピッチに立たせたいのか

これらを前提に、戦術・技術・フィジカル・メンタルを分解せず、同時に育てるための構造それがモルフォシクロです。

本書では、このモルフォシクロをサッカー以外の学問(生理学・神経科学・運動学・複雑系科学など)と結びつけながら説明していきます。

「サッカーのために特別に考案された方法論」を理解するための本

戦術的ピリオダイゼーションは、よくある「トレーニング理論の応用」ではありません。

本書が繰り返し強調するのは、戦術的ピリオダイゼーションが

サッカーという競技の構造そのものから生まれた方法論
であるという点です。

そのため、

  • フィジカルトレーニング理論
  • 一般的なピリオダイゼーション
  • 分業型トレーニング(戦術・技術・体力を別々に鍛える考え方)

こうした従来理論との違い・限界も、文献レビューを通して丁寧に整理されています。

「なぜ戦ピリは“統合”を重視するのか」
「なぜ部分最適ではうまくいかないのか」

このあたりが腑に落ちる構成です。

本書の構成と読みどころ

本書は学術書に近く、正直に言えば簡単な本ではありません
ただし、章ごとに役割ははっきりしています。

● 前半(第1〜3章)

  • 戦術的ピリオダイゼーションとは何か
  • どんな理論的背景があるのか
  • 既存理論との違いは何か

→ 「戦術的ピリオタイゼーションの全体像」を理解するパート

● 中盤(第4〜8章)

  • モルフォシクロの構造
  • 強度・特異性・適応
  • 神経・筋・疲労・エピジェネティクス

→ 「なぜその構造が成立するのか」を科学的に説明するパート

※ここが一番難しいですが、「感覚・集中・判断がトレーニングで変わる理由」が見えてきます。

● 後半(第9〜10章)

  • プレーイングモデル
  • 方法論的原則
  • 計画と複雑性

→ 指導・計画にどう落とし込むかを考えるパート

用語補足:この本を読む前に知っておきたい考え方

◆ プレーイングモデル

単なる戦術配置ではなく、
チームがどんな意図でプレーするかという「行動の指針」全体

◆ 特異性(スペシフィシティ)

「サッカーで起きることは、サッカーの中でしか最適に鍛えられない」という考え方。

◆ 複雑性・全体性

サッカーは「分解すれば理解できる単純な現象ではない」という前提に立つ視点。

この本はどんな人に向いているか

正直に言うと、「すぐに練習メニューを知りたい人」には向きません。

一方で、

  • 戦ピリを言語化したい指導者
  • 「なぜそうするのか」を説明できるようになりたい人
  • 戦術・フィジカル・認知を一体で考えたい人

には、間違いなく価値のある一冊です。

戦術的ピリオダイゼーションを“メソッド”ではなく“思想”として理解したい人にとって、これ以上に体系的な日本語文献は、今のところ多くありません。

この本を読む意味

『戦術的ピリオダイゼーション再考』は、

  • 戦術的ピリオダイゼーションを流行語で終わらせないための本
  • 「戦術を軸にチームを育てる」ことの本質を問う本

だと言えます。

難解ではありますが、読み進めるほどに「サッカーを見る目」「トレーニングを組み立てる視点」が確実に変わっていくタイプの一冊です。

「戦術的ピリオダイゼーションって、結局なんなの?」
そう感じたことがある人ほど、一度は向き合ってみる価値がある本だと思います。

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