プレミアリーグの「ボクシング・デー」を見るたびに、サッカー指導者として複雑な気持ちになります。
正直に言えば「この日程、選手には相当きついよな」と思うのが本音です。
日本の指導現場では、年末年始はオフを取ってリフレッシュするのが当たり前ですし、コンディション管理の観点から見ても、理想的とは言えません。
実際、小学生年代を指導する立場の私は公式戦が入らない限りはオフ日にしたり、リラックスできるイベントのみ行なったりすることがもっぱらです。
それでも、この文化がイギリスで100年以上続いている事実を見ると、単純に「無理をしている」とは片づけられない何かがあると感じます。
選手にとってのボクシング・デーは「試合以上のもの」
ボクシング・デーは、選手にとって楽な日ではありません。
連戦の真っただ中で、体は重く、ケガのリスクも高い。
それでも多くの選手が、この日の試合を特別なものとして語ります。

理由ははっきりしています。
この日は、スタジアムの雰囲気がまったく違う。満員の観客、家族連れ、世代を超えたファン。
ピッチに立つ選手たちは、「ただ勝ち点を取るため」ではなく、「このクラブの歴史の一部を担っている」という感覚でプレーしているように感じるコメントを多く見ます。
指導者として見ていて思うのは、これは技術や戦術では身につかない力だということです。
「この試合には意味がある」と理解してプレーできる選手は、強い。
精神的な土台が違います。
クラブとファンが作ってきた一日
ボクシング・デーが特別なのは、選手だけの話ではありません。
クラブにとっては、地域とのつながりを再確認する日でもあります。
勝てば何年も語り継がれるし、負けても記憶に残る。
それだけ、この一日が人々の心に刻まれているということです。
ファンにとっては、もはや年中行事です。
親に連れられて初めてスタジアムに行った記憶、寒い中で見た試合、試合後に家族で語り合った時間。そういった体験が積み重なって、「このクラブが好き」という感情が育っていく。
日本ではなかなか感じられない、サッカーが文化になる瞬間は、こういうところにあるのだと思います。

世界から見れば「異常」でも、それがプレミアリーグ
世界の多くのリーグでは、クリスマスはオフ期間です。
選手を休ませることが最優先されますし、それが合理的でもあります。
それでもプレミアリーグは、あえてボクシング・デーを守り続けてきました。
世界基準で見れば「異常」かもしれません。でも、この“非合理”を守ってきたからこそ、プレミアリーグは唯一無二の存在になったとも言えます。
サッカーを「仕事」ではなく「生活」として捉えてきた結果が、この文化なのだと思います。
指導者として、ここから何を学ぶか
もちろん、日本で同じことをやる必要はありません。
日本には日本の文化と環境があります。
ただ、指導者として強く感じるのは、サッカーが「人の記憶に残るもの」になっているかどうか、という視点の大切さです。
勝った負けた、上手くなった下手になっただけで終わるのではなく、「あの試合」「あの時間」として心に残る経験を、どれだけ選手に与えられているか。
ボクシング・デーは、サッカーが競技を超えて文化になるとはどういうことかを教えてくれます。
指導者として、技術や戦術と同じくらい、その部分も大事にしていきたい。そんなことを考えさせられるシーズンです。





