「どうしてイギリスはクリスマスに本気でサッカーをやるの?」
世界の多くの国では、クリスマスは家族と過ごす大切な休日。
サッカー選手もリーグも“お休み”が当たり前です。
それなのに、プレミアリーグだけは12月26日、むしろ一年で一番盛り上がる試合日を迎えます。
寒い冬、街はイルミネーションに包まれ、スタジアムへ向かう人々。
家族でチキンを食べ、プレゼントを開けた翌日、
人々は当たり前のようにサッカーを見に行く——
この日を知れば、サッカーは「スポーツ」ではなく
文化そのものだということが分かります。
それが、100年以上続く伝統「ボクシング・デー」です。
なぜこの日が、クリスマスの象徴になったのか。
プレミアリーグとイギリス社会の歴史から、ひも解いていきましょう。

なぜプレミアリーグ「ボクシング・デー」は特別なのか
プレミアリーグのボクシング・デーが特別なのは、
サッカーが「休日の娯楽」ではなく「生活の一部」だから
イギリスでは、サッカーは単なるスポーツではありません。
それは、
- 町の誇り
- 家族の会話
- 世代をつなぐ文化
として存在しています。
ボクシング・デー(12月26日)は、
クリスマス翌日の祝日で、多くの人が仕事を休みます。
この「みんなが休める日」に、みんなで同じものを見る・語る・盛り上がる存在としてサッカーが選ばれてきました。
「せっかくの休日だからサッカーをやる」のではなく、
「サッカーがあるから、この休日が特別になる」という考え方なのです。
たとえば、日本のお正月を想像してください。
- ・家族が集まる
- ・テレビで決まった番組を見る
- ・毎年同じ風景が繰り返される
イギリスにとってのボクシングデーのサッカーは、これとほぼ同じ役割を果たしています。
実際、ボクシング・デーの試合は、
- ・満員のスタジアム
- ・視聴率の大幅上昇
- ・伝統カード(ライバル対決)が組まれる
など、特別扱いされています。
子どもは親に連れられて初観戦をし、大人は「昔のボクシングデーの試合」を語ります。
こうしてサッカーは、思い出として家族の中に残っていくのです。

ボクシング・デーはどうやって始まったのか
ボクシング・デーが生まれた理由は、
サッカーが「労働者のためのスポーツ」だったから
現在のプレミアリーグは、世界最高峰のプロリーグとして知られています。
しかし、その始まりはとても素朴なものでした。
19世紀のイギリスでは、
- ・工場で働く人
- ・港で荷物を運ぶ人
- ・炭鉱で働く人
- ・使用人
といった労働者が社会の中心でした。
彼らは毎日長時間働き、自由な時間はほとんどありません。
そんな中、数少ない「完全な休日」がクリスマスとボクシング・デーだったのです。
この日だけは、
- ・朝から晩まで仕事がない
- ・家族や仲間と過ごせる
- ・体を動かして楽しめる
だからこそ、人々は自然とサッカーをする・見るようになりました。
そもそも
もともとボクシング・デーは、
「クリスマスに働いた使用人や労働者に、箱(Box)に入った贈り物を渡す日」として始まりました。
つまり
- ・クリスマス → 家族のための日
- ・ボクシング・デー → 庶民が自由を楽しむ日
という役割分担があったのです。
この日に行われたのが、地元同士のサッカー試合でした。
理由はシンプルです。
- 1. 道具が少なくてすむ
- 2. みんながルールを知っている
- 3. 見るだけでも楽しい
しかも当時は、「近くの町同士で試合をする」という形が多く、移動も簡単でした。
この流れが続き、20世紀に入ると、
- 12月26日は試合をする日
- 家族でスタジアムへ行く日
- サッカーで盛り上がる日
という認識が、社会全体に定着していきます。
やがてプロリーグが誕生しても、この習慣は変わりませんでした。
「この日にサッカーがないのはおかしい」
そう考える人の方が多かったのです。
現代とのつながり
- ・12月26日以降に複数試合を集中開催
- ・伝統的なカードが組まれる
- ・スタジアムは満員
という特徴があります。
これは単なるビジネスではなく、100年以上続く流れを守っている結果です。
選手たちは厳しい日程を戦いますが、ファンはこう言います。
「きついのは分かっている。でも、これがプレミアリーグなんだ」
結論
ボクシング・デーは、誰かが作ったイベントではありません。
- 働く人が休める日
- 人々が自然に集まる日
- サッカーが一番似合う日
として、人々の生活の中から生まれた伝統なのです。
だからこそ今でも、「クリスマスの象徴」として大切にされています。

サッカー指導者の私が感じたボクシングデーの面白さ
サッカー指導者という立場でプレミアリーグのボクシング・デーを見ると、正直なところ最初に浮かぶのは「いや、きついでしょ」という感想です。
日本の現場では、年末年始はオフにして、体も心もリセットするのが当たり前です。
だからクリスマスの翌日に公式戦をやるという文化は、どうしても無理をしているように見えていました。
しかし、ボクシング・デーについて調べたり、映像を見返したりするうちに、その見方は少しずつ変わっていきました。
イギリスではサッカーが“特別なイベント”ではなく、完全に生活の一部なんですね。
家族でスタジアムに行くのも、試合の話をするのも日常の延長。
その延長線上に、たまたまボクシング・デーがある、という感覚です。
育成現場を見ていると、どうしても「どれだけ上手くなるか」「どれだけ勝てるか」に意識が向きがちです。
しかし「誰のためにプレーするのか」「なぜサッカーを続けているのか」という視点も同じくらい大事です。
もちろん、日本で同じことをやる必要はありません。
ただ、サッカーが人の記憶に残り、世代を超えて受け継がれていくものだという感覚は、指導者として大切にしたい部分です。
ボクシング・デーは、「サッカーってやっぱり文化なんだな」と、あらためて気づかせてくれる存在だと思っています。





